『医師と患者の認識ギャップとは何か』
― 「説明したつもり」が伝わらない理由 ―
こんにちは。副主任講師の吉田稔です。
今回は、メディカルヒューニングの視点から、医療現場で起きやすい「医師と患者の認識ギャップ」について考えてみたいと思います。

結論から言うと、患者中心医療の課題は、単に説明不足だけではありません。
医療者が「説明した」「伝えた」と感じていることと、患者さんが「理解できた」「安心できた」と感じていることのあいだに、ズレが生まれていることがあります。
医療者は、限られた時間の中で丁寧に説明しようとされています。
けれど患者さんは、その場ではうなずいていても、あとから
「結局、自分はどうすればよかったのだろう」
「聞きたいことがあったけれど聞けなかった」
と感じていることがあります。
つまり、医療者側の「伝えた」と、患者さん側の「受け取れた」は、必ずしも同じではないのです。
ここで大切なのは、説明の“量”だけではなく、患者さんがどんな状態で話を聞いていたのか、質問しやすい空気だったのか、自分の思いや不安を出してもよいと感じられていたのか、ということです。
患者中心医療とは、理念として掲げることだけではなく、相手にどう届いたかまで含めて対話を見直していくことなのだと思います。
たとえば、
– 丁寧に説明したつもりだったのに、患者さんはよくわからないまま帰っていた
– 質問がなかったので理解されたと思っていたが、実は聞けなかっただけだった
– 必要な情報は伝えたが、患者さんは自分の選択肢として整理できていなかった
そんなことは、日常の診療の中でも起こりうるのではないでしょうか。
メディカルヒューニングでは、こうしたズレを埋めるために、まず「関係性の質」に目を向けます。何を伝えるかだけではなく、相手がどんな状態で受け取り、どんな気持ちでそこにいるのかを感じながら関わること。そこに、患者中心医療を日常の対話に落とし込むヒントがあると考えています。
もしよければ、こんな問いを一度持ってみてください。
– 自分は「説明したつもり」で終わっていないだろうか
– 相手は本当に質問しやすいと感じているだろうか
– うなずいていることを、理解や納得と同じものとして受け取っていないだろうか
こうした問いに気づくことが、すでに変化の第一歩なのだと思います。
患者中心医療を、理念で終わらせないために。まずは、この小さな認識のズレに気づくところから始めてみませんか。
次回は、
**「質問しやすい雰囲気はどう作るのか」** について、もう少し具体的に考えていきます。
